農家の人達にとって、田畑で栽培している作物以外の植物はみな雑草。草ばかりでなく作物を荒す大小の動物も、また敵です。今回はその内いわゆる雑草について考えてみましょう。丁度この時季は初夏。雨がよく降り、氣温が上ることで雑草はどんどん繁茂します。ドクダミ、カラスビシャク、スベリヒユ、ナズナ、スギナ、アカザなどが代表的です。いずれも大変生命力の旺盛な草々です。雑草と一くちに言いますが、先に挙げた草たちは、実は食用にもなり、薬草として昔から利用されていることは、一般の方々には意外と知られていないのです。そこで、その利用のされ方などを探ってみたいと思います。カラスビシャクはサトイモ科。“夏が来れば思い出す。はるかな尾瀬、遠い空♪”で知られるミズバショウ、ザゼンソウ、テンナンショウ、ウラシマソウ、生け花に使われるカラーもこの仲間です。サトイモ科の特徴は花茎の先に、漏斗(ろうと)状に巻いた仏炎包を付け、中に肉穂花序が一個直立しています。
カラスビシャクは多年草で根出葉は三枚の小葉を付け、仏炎包は緑色。この根茎を薬用として用います。
農家の人は、雑草扱いにすると同時に薬用にすることを知っています。畑を耕しながら、このカラスビシャクを採って、畑の片隅に放り投げておきます。作業が終わると、これを掻き集めて、薬屋さんに持って行き、いくばくかの金銭をもらいます。この薬代金を集めたものが、ヘソクリの語源になったと言われています。根茎が丸く凹んでいて、お臍のような形に見えることと合せて、この名を得たとの説も有力です。民間薬としては、つわり(悪阻オソ)の妙薬として用いられます。
漢名は半夏(ハンゲ)。カラスビシャクの塊茎の上皮を去って乾燥したものを使います。ほとんど無臭で、味は強烈なえぐみがあります。漢方処方には、半夏厚朴湯(コウボクトウ)・半夏瀉心湯(シャシントウ)・半夏白朮天麻湯(ビャクジュツテンマトウ)などがあります。
半夏厚朴湯は、体力がやや低下し、軽度の腹部膨満感があって、咽喉が塞がったような感じが消えず、氣分が憂鬱で、不安感、不眠、心悸亢進、めまい、頭重感などがあり、脈は沈んで弱く、腹部は軟弱で、鳩尾(みぞおち)に振水音があるような人に効果があります。このような状態を漢方医学では“氣のうっ滞”と診断します。半夏瀉心湯、半夏白朮天麻湯の解説は紙面の関係上、次号に記すことにします。
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