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コラム 09月15日更新

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未病を治す

第36回 自分の健康は自分で守る

 歌舞伎座などで演じられる有名な狂言の一つに「附子(ブス)」という曲目があります。主人が召使いの若者、太郎冠者と次郎冠者を避けて、薄暗い部屋の奥で時折、何やら秘め事をしていました。それをこの二人は、物陰から興味を持って見ていました。
  ある日、主人は所用で外出することになります。そこで主人は二人に言い付けます。「あそこには猛毒の附子があるによって、決して近付くことはあいならぬぞ」と、きつく言い残して館を後にしました。
  二人は主人がいつとなくあの場所に近付いて居るのに、何ら事無きを得ているのは、と疑問を抱きます。
  太郎冠者と次郎冠者は、不安と興味のないまぜな気持で、あの場所に、抜き足差し足で忍び寄ります。すると好い匂いが辺りに漂っているではありませんか、そこにある瓶から・・・。こわごわ、瓶の中の附子を舐めてみると、実に甘い。二人は次々に貪り舐め尽くしてしまうのです。猛毒の附子と伝言して外出した主人の品は、なんと当時、貴重だった黒砂糖だったのです。主人の帰館の後の有様は明々白々です。
  そこで案じた二人は、主人の大切にしていた品物、宝のようにしていた、壺や掛け軸を、割り破り、これを言い訳にします。「お留守をいいことに、相撲を取っていて、主人の大事なものを壊してしまいました。お詫びに死のうとして、附子をすっかり舐めたのです」と。主人は言葉を失った・・・ということです。二人のとんちに観客が爆笑を誘われたことは言うを待ちません。
  このブスは現代では附子(ブシ、漢名)と表現されます。日本名はトリカブト。多年生の草木で、我国には三十種ほどあるとか。トリカブトの名はニワトリのトサカに花が似ているところからといいます。先に記しましたように最も有毒な植物の一つ。この根には、アルカロイドを含み、その主なものはアコニチンです。決して素人は扱うことは禁物です。
  しかし、漢方薬としては大変重要な薬剤なのです。体を温め、新陳代謝を促し、身体の関節マヒ・疼痛・腹痛・下痢の治療に秀れています。要は心臓の拍動を促進し、血行を通して、酸素、二酸化酸素(CO2)、すなわちガス変換を盛んにし、栄養の組織への運搬を担います。漢方処方には、附子湯(ぶしとう)、桂枝加附子湯(けいしかぶしとう)、真武湯(しんぶとう)などあります。漢方を扱う医師や薬剤師に必要に応じ、相談して下さい。



著者プロフィール:横山 瑞生(よこやま ずいしょう)
1939年 茨城県常陸大宮市に生れる。
1964年 東京高等鍼灸学校卒業、
在学中から大塚敬節氏に師事し漢方を学び、後小川晴通氏に師事し鍼灸を学ぶ。
1971年 中国医学研究協会設立に参画。
1973年 中華医学会の招聘で訪中、
鍼麻酔、耳鍼療法学など我国に最初に紹介した1人。
現在、日本東洋医学会会員、日中医療普及協会会長、
新宿鍼灸師会会長、日本ホリスティック医学協会常任理事、一本堂鍼灸療院院長などの傍ら国内外の後進の指導に当たる。
■著訳書
『カラー版鍼灸解剖図』『最新中医針灸穴位掛図』『針灸経穴辞典』『針灸寄穴辞典』『アレルギーはツボで治る』『耳針療法掛図』
ほか多数。


(一本堂横山鍼灸療院長 横山瑞生)

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