五節句の一つに七草の節句があります。1月7日の朝、春の七草を粥に炊き入れて、これを頂くと、一年の邪氣を払うと信じられていました。
春の七草に入っていないのが不思議に思う菜に、蓬(よもぎ)があります。蓬は山野によく見かけるキク科の多年草です。1月上旬には日当たりのよい土手や川の堤に、3〜5cmぐらいの若芽が萌え出ています。和名はヨモギ、モグサ、サシモグサ、モチグサなどです。非常に生活力のある草木で、群生して"もえいずる"ことからモグサ、また、餅に搗き込まれて食することからモチグサの名を得たと言い伝えられています。葉の裏に白色の綿状の線維があり、5月中旬から6月の終り頃までに採集した蓬の葉を、晴天の日に2日から5日乾かして臼に入れて搗き、葉や葉脈を去って、残った線維を集めたものがモグサです。今日の新潟地方では、採取した蓬を雪上に晒して製造するそうです。これが灸治にするモグサです。
モグサの名の起こりにはもう一つ、燃やす草→モエルクサ→モグサとなったという説もあります。
蓬は漢方薬として用いられます。漢名は艾葉(がいよう)。この薬効は多用で、収斂(しゅうれん)(生体の組織を収縮させる作用)、止血・吐血・鼻血、腹痛、冷え症、神経痛、抗菌などに使用されます。
私の生家の周りは多くが農家でした。戸外で働いていると、鎌(かま)や鉈(なた)、切り株や尾花の葉で手や足に傷を負うことがしばしばあり、その傷から出血します。こんなとき辺りに生えている蓬の葉をもんで、その汁を傷口に当てると、たちまち止血します。私も子供の頃よく怪我をしては、たびたび体験しました。
また蓬の茎で矢をつくり、これを四方に射て邪を払う儀式が、中国から我国に伝わっています。蓬はキク科の植物。キク科の植物は芳香性に富んでいます。洋の東西を問わず、芳香を持つ物体は邪を抜くと考えられてきました。アロマテラピーも、こうした起源に由来していましょう。
朱肉に用いられている朱の顔料は硫化水銀で、天然には辰砂(しんしゃ)として産します。この顔料を油で練り合わせ艾(もぐさ)に染ませ印肉とします。この色は何年経っても変色しません。「署名捺印し、交わした書類は決して心変わり致しません」という意味が込められているのです。
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