毒にも薬にもならない人、そんな人は面白くもなんともない。つまり人氣のないことをいいます。多少悪だったり間抜けの方が、人間として周りから関心を持たれます。
かつて、昭和天皇がある地方に行幸された折、野原か田畑の周りを散策していた時、ふと足許の野草に目を止め、「これは何と言う名の草か」と問うたそうです。するとお付きの者が「これは雑草です」と応えたと言います。天皇は「雑草と言う名の草はありません」とたしなめられた、という話は大変有名な逸話として今日に伝わっています。
現代のような科学技術が発達していなかったその昔、私たちの先祖は自然を上手に利用して、生活の糧として来ました。健康維持のための保険や治療の目的として今に伝承された、秀れた草根木皮には枚挙にいとまがない程です。
この時季、道端を注意しつつ歩いていると、あるわあるわ、薬草として利用出来るものが、次々と目に留まります。
私は東京の四谷に住んでいます。自宅から診療所までは約5分の道程(みちのり)です。その間に十種類ほどの薬草を見かけます。四谷は都心でも比較的自然の多いところです。樹木も多いし、従って土の露出した場所も多いのです。
たんぽぽ、はこべ、くず、くこ、どくだみ、あざみ、あかざ、かきどうし、いたどり、いのこづち、おおばこ、からすびしゃく等の草本類。これは、みな薬草として昔から利用されています。
「医食同源」という言葉は、病氣を治すのも、食事をするのも、生命を養い健康を保つためであり、その本質は同根だという意味に使われています。上記した草本には、そうしたものが大多数を占めています。また、漢方薬や民間薬には、草木染めに用いられるものも大変多いようです。
源氏物語に出てくる末摘花(すえつむはな)の名詞は別名「紅花(べにばな)」で、山形県の県花に選ばれています。遠くインドからもたらされたキク科の越年一年草です。
この花は口紅の原料でもあり、染料としても世界的に有名です。漢方薬としても広く知られています。
次号からは、薬草を薬として、食物として、染料としての関係を記しながら、日常生活に役立つ薬草の使い方を心掛け、紹介していきたいと思います。
|