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コラム 09月15日更新

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未病を治す

第19回 自分の健康は自分で守る

 今から、おおよそ二千年前の中国、つまり後漢の時代に、医学の古典『素問・異法方宜論』に、次のような文章が載っています。「中国の北方は寒く、乳(製品)を食す。この食物に偏ったが故に、病が多い。これらの疾病には灸が好い」と。
 私はかって、モンゴル族の住む、高原の地を訪ねたことがあります。見渡す限り、草また草の原。ここには馬と羊が人口をはるかに超える数が生息しているのです。人々は草食動物の恩恵を受けて、生活していることが知れました。
 このような地方が灸治療の発達に継がったことは、想像に難しくありません。"もぐさ"の原材料は蓬。蓬は生命力が強く、寒さや土力に乏しいところでも成育するのです。蓬はホウと音読します。この蓬の熟語は、蓬頭、蓬門、蓬室など芳しくない意義を表します。ですが蓬で作った矢は祭事に用い、東西南北に射て、邪気をはらうといいます。(『私記』)

 そもそも古代中国人の病理観は、悪霊、邪氣が人体に入って病を引き起こすと考えられました。従ってこの悪霊を追い出す手段として、尖ったもの(鍼)、熱いもの(灸)、あるいは揉みくちゃにしたり、叩いたり(按摩)することで、病疾を駆逐し、治療できると考えたのです。
 考え方は古代と現代では異なっていますが、治療行為そのものは変わることなく今に伝承されているのです。そこには道理があるからです。薬は苦い。これもまた邪氣にとっては敵いません。
 さて、蓬の葉で生成した"もぐさ"を使った灸治療の実際を見ることにしましょう。灸はツボの上に、直接"もぐさ"を立て、それに火を点じて、熱刺激を生体に与えます。言うまでもなく熱感は強烈です。「間接灸」といって生姜や大根を薄切にしたものに"もぐさ"を置いて行う方法もあります。火傷(やけど)を作らずに適当な熱刺激を、と考えたわけですが、直接灸の方が効果は好いといわれています。灸の大きさは雀の卵大、小豆大、米粒大と様々です。今日多くは半米粒大とか、木綿糸状で細小のもので一定の効果があることが認められています。

 足の三里というツボは最も多くの人々に知られ、その応用範囲も広く、ツボのうちのツボと言われています。鎌倉時代の随筆、吉田兼好法師の著『徒然草』にも「四十(よろじ)以後の人、身に灸を加えて、三里をやかざれば、上氣のことあり。必ず灸すべし」(第148段)という文章があります。





著者プロフィール:横山 瑞生(よこやま ずいしょう)
1939年 茨城県常陸大宮市に生れる。
1964年 東京高等鍼灸学校卒業、
在学中から大塚敬節氏に師事し漢方を学び、後小川晴通氏に師事し鍼灸を学ぶ。
1971年 中国医学研究協会設立に参画。
1973年 中華医学会の招聘で訪中、
鍼麻酔、耳鍼療法学など我国に最初に紹介した1人。
現在、日本東洋医学会会員、日中医療普及協会会長、
新宿鍼灸師会会長、日本ホリスティック医学協会常任理事、一本堂鍼灸療院院長などの傍ら国内外の後進の指導に当たる。
■著訳書
『カラー版鍼灸解剖図』『最新中医針灸穴位掛図』『針灸経穴辞典』『針灸寄穴辞典』『アレルギーはツボで治る』『耳針療法掛図』
ほか多数。


(一本堂横山鍼灸療院長 横山瑞生)

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